井上敦子 | ヴァイオリン奏者・アレクサンダーテクニーク教師

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作品展を聴きに

更新日:2022.12.26 [Mon] |

9月と12月に、
ヴァイオリニストさかなかみゆきさんの作品展へ伺いました。

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プログラムはさかなかさんの自作自演、すべて【無伴奏】です。


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旋律楽器と呼ばれるヴァイオリンは、ほかの楽器と一緒に演奏することの方が多いので、
いわゆる「無伴奏」というと旋律と和声を一手に担うため、ヴァイオリン1本で成り立たせるためには技術的にはもちろん、音楽的にも成熟したものが欲求されます。
(代表的なものとしてはバッハやイザイの無伴奏ソナタ、パルティータなど)



さかなかさんの曲たちは、それらの高度なところへ到達する過程や、その手前の段階でも挑戦することができるもので、技術の習得の観点からも理にかなっています。

例えば、バッハの無伴奏のソナタ・フーガに取り組んでいるときに体の問題で演奏が難しいことから、「女性の小さな手でもやさしく」という着想を得た曲や、

西洋音楽史や各国の民族音楽との融合や、自然をモチーフにしているものなど、
作風が多様です。



そしてなにより、彼女の感性と好奇心と勤勉さと人柄からにじみでる...なんというか、にじみ出ざるをえない、とてつもないものでできている。
そんな印象を受けつつも、【
やさしい】とひらがなで書くのがふさわしいような音楽でした。
易しくもあり、優しくもあり。


しかしそこにあった本質的なものには、「やさしい」に含まれるさまざまなものとの対峙があるように感じます。

この2回のコンサートでは、そんな作品たちを本人の演奏で聴くことができました。

限りなく研ぎ澄まされた曲に、そして演奏する音に、ほんとうに嘘がない。
そんな印象を強く受けました。


聴いている私自身は、その行為をとおして自分の内側をやさしくノックされるような感覚になりました。
自然と思考が広がっていったり、忘れていた記憶をふと思い出す瞬間などもあったような。

また、
ともすれば私たちが衝動的に追い求めてしまう、派手さや「ウケる」要素ってあると思うのですが、
そればかりでは見えなくなってしまうもの、に気づかせてもらうような。

私の語彙では書ききれないことも多いですが、そんな時間なのでした。





さかなかさんは大学の2つ上の先輩で、じつは学生の頃はさほど接点はなく(わたしは一方的に憧れていたんですが)

社会人になって仕事で再会し、その後、私がヴァイオリンとアレクサンダーのレッスンをさせてもらっているアローミュージックスクールのご縁でジャズと弦楽四重奏のコラボを何回か共演させてもらい、そのまた数年後の今年、思いがけずまた再会して、という経緯です。


彼女の曲たちを、私もレッスンで取り入れたいなあと思い楽譜を入手しました。

登場する際にはお楽しみに♪


さかなかみゆきさんの
ウェブサイト
楽譜・音源のページ


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